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漫画の心得
2010年8月4日(水)
記:鈴木専門指導員
  漫画は面白い。子供の頃、漫画家になりたいと思った方は多いと思います。
  しかし物語のある絵を描く事と漫画家になることは異なります。
  漫画家は個人事業主です。つまり「漫画家になりたい」と思うことと「社長になりたい」と思うことは同じことなのです。今回は漫画家を目指す方に心得を贈ります。
1.マネージメント能力は必須条件
  雑誌は毎月・毎週の決まった日に書店に並びます。編集→印刷→配送はスケジュールで管理されています。 もし、原稿が間に合わなかったら本の一部は真っ白となり、編集長と担当者は責任を取ります。 はたして原因を作った漫画家に次の仕事は来るでしょうか?

  時間の管理、健康管理、情報の管理、リスクマネージメントを怠らない。 一見自由に見える職業ですが、失敗は全て自分に帰ってきます。資本である体に悪いことをしない。思考や心に悪い人とお付き合いをしない。当たり前ですが、そんな日常的な対策も必要です。

  何ページの作品は何日で納められるのか?把握していなければなりません。
  筆が早い、納期が早いという信用を得て、チャンスを貰いプロの扉を開けた漫画家もいます。
  一人で作品を仕上げても収入は限られています。 人を雇い分業で作品を大量に生み出そうとする方には雇用責任が生まれます。何人必要か?誰に頼むのか?それを管理するのも仕事です。
2.好奇心、観察・探究心、継続力、豊かな心でセンスを磨く
  業界では「センス」とひと言で表現されますが、個人個人の生き方で育つものです。そしてプロの明暗を分けます。
  若い頃は新しさと豊かな感性で読者を増やすことは可能でしょう。私の友人も高校在学中でプロになった方も数人います。 しかし、それは人より早く扉を開けたに過ぎません。常に自己研鑽と情報収集を怠らず、継続しなければ生き残れません。
  絶えず書を読み昇華し、実体験・擬似体験を通し自分の引き出しと世界を膨らませ続けることを心掛けてください。

  感受性の豊かな人は、書物、会話や人の喜怒哀楽から、そして音楽や映画からでも新たなアイディアを生み出します。その心の平衡感覚を保つために、心と向き合うことは大切なことだと思います。
関東第一高等学校のITCクラブ作品1
3.己を知り、ターゲット・マーケットを考える
  プロであっても得て不得手があります。 どこの出版社のどの雑誌にどんな作品を売り込むか、それは大切な選択です。
  昔、自分から見て上手とは言えないプロを見かけましたが読者には大変人気がありました。 私は不思議に思いました。
  その時の私は、その方が適切な雑誌で作品を発表していたことに気が付かなかったのです。

  時代を素早く取り入れることや野球というジャンルにニーズが多いことも忘れてはなりません。
又、読者が低学年になるほど、作者は影響力を自覚して作品と向き合わなければなりません。
小さな子供に本を与える親の気持ちも考えてください。
楽に描けるジャンルは、多分競争率の高いジャンルだと思います。
4.コミュニケーション能力と良き友人を得る
  絵を描くことは自身の思いを伝える始原的な手法です。そして、表現方法は人それぞれ違います。
  プロになる前はアシスタントとして、プロ(親しくなるまでは先生と呼びます)から漫画ビジネスの世界や技術を学びます。コミュニケーションの第一歩は先生に必要とされることです。
  画力はまだまだでしたが、会話が楽しく、食事作りが上手なため、先生に可愛がられているアシスタントがいました。 先生を楽しい気分にさせる。締め切り直前の修羅場では貴重な才能です。

  立場が変われば出版社との打合せ、アシスタントへの指示、サイン会やファンレターの対応など、人と関わる仕事をする限り、どのような仕事に就いても必要な能力です。

  仕事を続けていれば窮地は必ず訪れます。そんな時、頼りになるのは友人です。
  自分まわりの人に感謝と謙虚さを持ち、良き仲間を増やす事は豊かな作品と人生を生み出すために最も大切なことだと思います。
関東第一高等学校のITCクラブ作品2

以上