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インダストリアルデザインへの招待状

インダストリアルデザインへの招待状

2010年11月05日 記 : ITCクラブ会員 桑原 直幸

インダストリアルデザインとは商品デザインを意味し、栄久庵憲司先生が特に有名なデザイナーです。皆さんもラーメン屋さんで餃子を食べるでしょう。そこで目にするキッコーマン醤油の卓上型小瓶は若いときの先生の作品です。それは醤油差しであり、しかもコンビにでも売っている安価な醤油の入れ物です。切れが良く、機能良好。形も、色もラーメン屋にぴったり。数十年間、どこのスーパーでも売っているベストセラー商品です。

先生は1929年に東京に生まれ、東京藝術大学美術学部図案科を1955年に卒業し、今もご健在です。1957年に大学の仲間とGKインダストリアルデザイン研究所(以下GK 社)を設立しました。設立されて間もなく、1958年に、GK社はキッコーマンから醤油の卓上瓶のデザインを依頼され、設計しました。デザインが生まれるまでの努力が氏の著書、「インダストリアルデザインが面白い」(2000年1月5日発行、河出書房新社)に詳しく記されています。

先生は大学を卒業し、翌年1956年に、JETROのデザイン交換留学生制度によって1年間、ロスアンゼルスのアート・センター・カレッジ・オブ・デザイン大学に留学しました。そこでは自動車デザイン専攻を選択し、商品デザインの技法や、商品が売れる理由を勉強しまた。先生はロスの大学で勉強しつつ、毎日町に出かけ、目に留まった商品や物をスケッチしていました。この生活が創作魂に火をつけた、と著書に記されています。デザインに対する先生の考え方は、この生活によって育まれたのでしょう。先生はこの本の中で創作魂を「モノの世界に調和のある美しさを求め、不快なものを嫌う。デザインは人のためにある。モノ世界、機械の壮大な人間化。大切なのは常にこうした気持ちを持ってモノ世界を構築し、設計しようとする精神といえよう。」と言っています。なお、先代の成田エクスプレスNEXや、秋田新幹線こまちも先生の作品です。ソニーのノートパソコンVAIO、ロボット犬AIBO、ヤマハの多くのオートバイなど、日ごろ目にしているいろいろな商品も先生の作品でした。

人は趣味や芸術として古より思想や思いを表現してきました。商品のデザインに、常に芸術的な創造性を内在しています。商品を通じ、一般の会社の設計者たちは常に自分の心や思いを顧客に伝えようと願っています。商品デザインが持つ心の伝達力に私は特に魅力を感じています。今日、皆さんが目にする商品は大量生産です。目にして手に触れる機会が多いわけです。インダストリアルデザインは芸術家や特殊才能を持つデザイナーや美術家だけのものではありません。工業科で学ぶ皆さんにとって極めて有効なコミュニケーションの手段です。皆さんの思いを実現できる手段です。デザインは広告メディア以上にコミュニケーションの手段です。

品をデザインする過程は設計者の心と思考の過程です。商品のデザインと設計者の思いは文章と著者の思想の関係と同じです。テクニックは二の次でしょう。是非、皆さんもインダストリアルデザインに興味を持ってください。皆さんもITCで売れるデザインを私と一緒に追求してみませんか。